50代で転職し、私自身の年収は以前の約半分になりました。

それでも転職を決めたのは、「何とかなるだろう」と考えたからではありません。

転職後の手取りをExcelに入れ、将来の支出を変えず、生活防衛資金を残したまま、90歳頃まで資産が尽きないかを試算しました。

私が確認したのは、「転職できるか」を判断する4つの数字と、「転職したいか」を決める最後の1つの問いです。

この記事では、年収が大きく下がる転職を決める前に、私が実際に確認した手順と試算条件、さらに転職から約1年後の答え合わせまで紹介します。


転職前に確認した「4つの数字+最後の1つの問い」

私が確認したのは次の5つです。

1.求人票の年収から、実際の手取りはいくらになるか

2.転職後の世帯収入で、毎年の家計が回るか

3.将来の支出を変えずに、資産はどう推移するか

4.90歳頃まで資産が尽きないか

5.生活が成り立つなら、このまま働き続けたいか

1.〜4.で「転職できるか」を数字で確認し、5.で「転職したいか」を考える。

私はこの順番で判断しました。

1.求人票の年収から「手取り」を見積もった

最初に確認したのは、転職後に実際に使えるお金です。

求人票に書かれている年収は額面なので、その金額がそのまま生活費に使えるわけではありません。

そこで私は求人票を見ながら、AIに、

「この額面だと、手取りはいくらになりますか?」

と聞きました。

税金や社会保険料を考慮した年間手取り額を概算してもらい、その数字をライフプランに使いました。

もちろん、AIが出した数字を正確な給与計算だと考えたわけではありません。

あくまで、

「転職したら、実際に使えるお金は年間でどのくらいになるのか」

を把握するための目安です。

また、転職によって年収が大きく変わっても、住民税はすぐに新しい年収を基準にした金額になるわけではありません。

そこで、前年の収入をもとに住民税も確認しました。

2.転職後の「世帯収入」をExcelに入れた

次に、以前から使っていた家計シミュレーションExcelの収入を、転職後に予想される金額へ変更しました。

私自身の年収は、転職によって以前の約半分になります。

ただ、妻も働いているため、世帯収入で見ると以前の約7割です。

ここで重要だと感じたのは、

「自分の年収が半分になること」と「家計の収入が半分になること」は同じではない

ということでした。

転職条件を比較するときは、自分自身の年収が重要です。

一方、「その転職をしても生活が成り立つのか」を判断するときは、世帯全体の収入と支出で考える必要があります。

そこで転職後の世帯収入をExcelに入れ、毎年の家計が回るかを確認しました。

実際に数字を入れてみると、転職後の収入でも生活は成り立つ見込みでした。

私が使っている家計シミュレーションExcelについては、別の記事で詳しく紹介しています。

関連記事:「Excelで将来のお金を試算したら、『人生の優先順位』が見えてきた」

今回の記事ではExcelの作り方ではなく、そのExcelを実際の転職判断にどう使ったかに絞ります。

今回のライフプランで使った試算条件

ライフプランは、どんな前提を置くかによって結果が変わります。

そこで、今回の転職判断で私が実際に使った主な条件も書いておきます。

  • 投資信託(NISA・オルカン):年5%
  • 高配当株:手取り配当利回り約3%、元本は変わらない想定
  • 現預金:運用益0%
  • 生活防衛資金:生活費約6か月分を確保
  • 年金:65歳から受給
  • 年金額:ねんきんネットをもとに手取り額を試算
  • 退職金:0円
  • インフレ率:0%
  • 試算期間:90歳頃まで

オルカンは年5%

NISAで保有している全世界株式(オルカン)は、年5%で増える前提にしました。

NISA口座なので、今回の試算では運用益に対する税金を別途差し引いていません。

もちろん、毎年5%ずつ安定して増えるという意味ではありません。

長期のライフプランを作るために、私が置いた仮定です。

高配当株は「手取り」で約3%

高配当株は、元本が増減しない前提にしています。

配当については、税引前の配当利回りをそのまま使っているわけではありません。

現在、実際に受け取っている手取り配当額から逆算した利回りを約3%として計算しています。

給与や年金と同じように、実際に使えるお金を基準にしたかったからです。

現預金は0%

現金・預金については、運用によって増えることを期待せず0%としました。

資産の種類によって同じ利回りを使うのではなく、

オルカン5%・高配当株3%・現預金0%

と分けて計算しています。

インフレ率は0%

私はインフレ率を0%にしています。

現役中については、物価上昇分程度は給与も昇給するものとして、両者がある程度相殺される前提で簡略化しました。

ただし、将来も物価が上がらないと考えているわけではありません。

特に退職後は、給与の昇給で物価上昇を吸収できません。

そのため、インフレ率0%では将来の資産を多めに見積もる可能性があることは、試算上の注意点だと考えています。

これらの数字は「これが正解」というものではありません。

ライフプランは未来を正確に当てるものではなく、自分で置いた前提なら将来どうなるのかを見るためのシミュレーションとして使っています。

3.支出を都合よく減らさずに資産推移を確認した

次に確認したのが、転職後の資産推移です。

ここで気をつけたのは、転職するために都合のいいライフプランを作らないことでした。

年収が下がると、

「旅行を減らせば大丈夫」

「生活費をもっと削れば大丈夫」

と、支出側を調整したくなります。

私はそれをしませんでした。

生活費や将来予定している大きな支出は基本的にそのままにして、収入側を転職後の金額へ変更しました。

また、生活費の約6か月分を生活防衛資金として確保していましたが、このお金も年収減を補うためには使わない前提です。

つまり、

支出を都合よく減らさない。生活防衛資金にも手をつけない。

その条件でもライフプランが成立するかを確認しました。

4.年金も「手取り」で計算し、90歳頃まで確認した

転職直後の家計が回るだけでは、判断材料として不十分だと考えました。

確認したかったのは、その先です。

年金については、ねんきんネットで65歳から受給する場合の見込み額を確認し、そこから税金や社会保険料などを考慮した手取り額を見積もってExcelに入れました。

給与と同じように、年金も額面ではなく、実際に生活に使える金額で考えたかったからです。

退職金は0円として、試算には含めませんでした。

こうして、

転職後の手取り収入 → 将来の資産推移 → 65歳からの年金手取り額 → 90歳頃までの資産

を確認しました。

結果は、90歳頃まで資産が尽きない見込みでした。

そこで、

「年収は大きく下がる。でも、それによって人生全体のライフプランが破綻するわけではない」

と判断しました。

もちろん、将来の運用成績、税制、社会保険制度、物価などがどうなるかは分かりません。

90歳という年齢も、誰にでも当てはまる基準ではありません。

大切なのは、自分が納得できる前提を置き、転職直後だけではなく老後まで資産がどう推移するのかを確認することだと思います。

もし私の試算で途中で資産が尽きていたら、転職については考え直していました。

5.数字で大丈夫なら「このまま働き続けたいか」を考えた

ここまでで確認したのは、「転職しても生活が成り立つか」です。

数字上は大丈夫そうだと分かりました。

そこで最後に自分に聞いたのが、

「お金の問題がクリアできるなら、このまま今の会社で働き続けたいか?」

でした。

私の答えは「NO」でした。

前の職場では、日曜日の夕方になると、

「明日からまた会社か……」

と憂鬱になっていました。

いわゆる「サザエさん症候群」のような状態です。

まだ休日なのに、頭の中では月曜日の仕事の段取りを考え始める。

転職してからは、その感覚がほとんどありません。

もちろん、今の仕事にも大変なことはあります。

それでも、休日まで仕事に支配される感覚はかなり減りました。

私は年収が下がった分のお金で、

「日曜日の夕方を憂鬱に過ごさなくていい生活」

を買った、と考えることもできます。

私にとっては、それだけの価値がありました。

転職から約1年。事前の手取り試算は合っていた?

ここまでが転職前のシミュレーションです。

では、実際に転職して約1年。

事前に見積もった手取りと、実際の収入にはどのくらい差があったのか。

私の場合は、ほぼ予定どおりでした。

理由の一つは、前年の収入をもとに住民税も確認していたことです。

もう一つは、現在の私の収入は毎月の給与がほとんどを占めていて、年間収入の変動要素が比較的少ないことです。

そのため、求人票と毎月の給与から年間の手取りを予測しやすく、事前の試算と大きくズレなかったのだと思います。

これは誰にでも当てはまるわけではありません。

残業代の割合が大きい仕事、賞与の比率が高い仕事、業績連動の収入や各種手当が多い仕事では、年間手取りの予測は難しくなります。

AIで出した数字だけを信用するのではなく、

住民税・賞与・残業代・各種手当

など、自分の収入で変動しそうな部分を確認してからライフプランに入れるのがいいと思います。

資産形成中なのに、年収を下げていいのか?

資産形成だけを考えれば、年収が高い方が有利です。

収入を増やし、支出を抑え、その差額を長期間運用した方が、資産形成のスピードは上がります。

そう考えると、自分から年収が半分になる転職を選ぶのは、資産形成には明らかに不利です。

それでも今回感じたのは、資産を作る目的は、資産額そのものを増やすことだけではないということでした。

家計を管理し、生活防衛資金を確保し、資産形成を続け、将来のお金をシミュレーションしてきたことで、

「年収が下がるから今の仕事を続けるしかない」

ではなく、

「年収は下がる。それでもこちらを選ぶ」

という選択肢を持てました。

資産形成は、老後のためだけではなく、途中から人生の選択肢を増やしてくれる。

今回の転職で、それを実感しました。

年収が下がる転職をおすすめしているわけではない

私は、年収が下がる転職を積極的におすすめしているわけではありません。

私自身も最初は、年収を維持できる転職先を探しました。

年収を下げずに働く環境を改善できるなら、その方が家計にも資産形成にも有利です。

それでも希望する条件の転職先が見つからなかったとき、

「年収が下がるから無理」と感覚だけで決めるのではなく、本当に無理なのかを数字で確認してみる。

私はそうしました。

まとめ|4つを数字で確認して、最後の1つは自分に聞いた

50代で転職し、私自身の年収は以前の約半分になりました。

それでも転職して約1年、前の会社に戻りたいと思ったことは一度もありません。

転職前に確認したのは、次の5つです。

1.求人票から手取りを見積もる

2.転職後の世帯収入で家計が回るか確認する

3.支出を都合よく減らさず、資産推移を確認する

4.年金まで含め、90歳頃まで資産が尽きないか確認する

5.生活が成り立つなら、このまま働き続けたいか

1.〜4.で確認したのが「転職できるか」。

5.で確認したのが「転職したいか」です。

私はこの順番で転職を決めました。

年収が下がる転職を「何とかなるだろう」という気持ちだけで決めるのは怖い。

一方で、「年収が下がるから無理」と数字を確認せずに諦める必要もないと思います。

まず数字で「転職できるか」を確認する。そのあとで、自分に「転職したいか」を聞く。

ライフプランは老後資金を確認するだけでなく、人生の大きな選択をするときにも使える。

これが、今回の転職で私が実感したことです。

よくある質問

転職後の手取りは、事前の試算と合っていましたか?

私の場合は、約1年働いた結果、ほぼ予定どおりでした。

前年の収入をもとに住民税を確認していたことに加え、現在の収入は毎月の給与がほとんどを占め、年間の変動要素が比較的少ないことも理由だと思います。

残業代や賞与、各種手当などによる変動が大きい場合は、私よりも事前の試算との差が出やすいと思います。

共働きの場合、自分の年収と世帯年収のどちらで判断すべきですか?

私は、転職条件そのものを比較するときは自分の年収、転職後も生活が成り立つかを判断するときは世帯全体の収入と支出で考えました。

私の場合、自分自身の年収は以前の約半分になりましたが、妻の収入を含めると世帯収入は以前の約7割でした。

年収が下がっても転職できると判断した一番の基準は何ですか?

私の場合は、生活費などの支出を都合よく減らさず、生活防衛資金にも手をつけない条件で、90歳頃まで資産が尽きない見込みだったことです。

まず数字で「転職しても生活が成り立つ」と確認できたからこそ、そのあとで「それでも今の会社で働き続けたいか」を考えることができました。

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※この記事は私自身の転職とライフプランの試算経験をまとめたもので、特定の転職や投資方法を推奨するものではありません。試算に使った利回りや前提はあくまで私が置いた仮定であり、将来の運用成績、税制、社会保険制度、年金制度、物価などは変わる可能性があります。実際の判断は最新の情報をもとにご自身でご確認ください。